交通労働災害について
業務中の事故や災害などにより労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することを労働災害(労災)といいます。中でも自動車事故などの交通関係の労働災害を交通労働災害と呼んでいます。令和5年度の厚生労働省の労働災害発生状況によると、交通労働災害による死亡者数の割合は、19.6%と約2割をも占めているのが現状です。
過去、交通労働災害の対策として同省は、1994年に労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)、道路交通法(昭和35年法律第105号)、道路運送車両法(昭和26年法律第185号)、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)、道路運送法(昭和26年法律第183号)等の関係法令に基づく措置の一部を総合的に示した指針である「交通労働災害防止のためのガイドライン」を策定しています。また、その後の重大事故の結果などを受けて関連法令が改正されたため、2008年及び2013年、2018年に同ガイドラインは改正されています。
最新の改正である2018年の同ガイドラインでは、2016年に発生した長野県軽井沢町のスキーツアー大学生ら15人が死亡したスキーツアーバス転落事故の影響を受けています。この事故では、事故を起こしたバス運行会社が、運転手に健康診断を受けさせておらず、事故の2日前に道路運送法に基づく行政処分を受けていたことも伝えられています。若い乗客が命を落とす痛ましい事故を繰り返さないためにも、2018年の改正には新たに自動車運転者の健康管理の実施、睡眠時間確保への配慮など、新たな事故防止対策が追加されています。
こういった運輸・運送業関連の事故は勿論、その他の一般業種においても社有車や営業用トラックによる事故が発生した場合は、自動車を所有し労働者を使用している事業者の管理体制や、経営者の姿勢が厳しく問われることになります。
また、交通事故は労働者が事業者の直接指揮・管理下に置かれていない状況で発生しやすく、当該労働者だけでなく第三者に重大な危害を及ぼす恐れもあるなど、その発生リスクは一般の労働災害よりはるかに高いと思われますが、それにも関わらず、十分な指導・教育等安全対策が取られていないケースもたくさんあるようです。
そこで、労働者に業務で自動車等の運転を行わせる事業者はどのように安全を確保し、事故を起こさないようにすべきなのかについて、考えていきたいと思います。
※参考サイト
厚生労働省:職場の安全サイト 「交通労働災害防止のためのガイドライン」
【目次】
- 企業を取り巻く環境の変化
- 従業員が交通事故を起こしたら?企業の負う民事上の責任とは
- 自賠法に基づく運行供用者責任
- 事故によって企業責任が問われるケース
- 企業における交通事故防止のあり方
- 交通事故発生直後の緊急対応の手引き
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