【第4章】第5節 救急処置④
3.一次救命処置③
3.AED使用の手順
1)AEDを持ってくる
AEDは人の目につきやすい場所に置かれています。多くの場合、図18に示すように、AEDのマークが目立つように貼られた専用のボックスの中に置かれています。AEDを取り出すためにボックスを開けると、警告ブザーが鳴ります。ブザーは鳴りっぱなしにしたままでよいので、すぐに傷病者のもとに持参してください。
緊急事態に備えて、自分の職場や通勤途上のどこにAEDがあるかを普段から把握しておきましょう。設置場所がわかる全国AEDマップが公開されており(URL:https://www.qqzaidanmap.jp/)、厚生労働省が登録を呼びかけています。いざというときに備えて事前にアクセスし、身近なAEDを知っておくとよいでしょう。
2)AEDの準備
心肺蘇生を行っている途中でAEDが届いたら、すぐにAEDを使う準備に移ります。AEDを傷病者の頭の近くに置くと操作しやすくなります(図19)。
3)電源を入れる
AEDの電源を入れます(図20)。機種によって、ボタンを押して電源を入れるタイプと、ふたを開けると自動的に電源が入るタイプ(電源ボタンはありません)があります。
電源を入れたら、以降は音声メッセージとランプに従って操作します。
4)電極パッドを貼り付ける
傷病者の胸から衣服を取り除き、胸をはだけます。ボタンやホックが外せない場合や、衣服を取り除けない場合には衣服を切る必要があります。
AEDのケースに入っている電極パッドを袋から取り出します。電極パッドや袋に描かれているイラスト(図21)に従って、2枚の電極パッドを肌に直接貼り付けます(図22)。イラストに描かれている貼り付け位置は、胸の右上(鎖骨の下で胸骨の右)と、胸の左下側(脇の下から5~8cm下、乳頭の斜め下)です。電極パッドを貼り付ける間も胸骨圧迫を続けます。
電極パッドは傷病者の肌にしっかり密着させます。電極パッドと肌の間に空気が入っていると電気がうまく伝わりません(図23)。
機種によっては、電極パッドから延びているケーブルの差込み(プラグ)をAED本体の差込み口に挿入する必要があります。AEDの音声メッセージに従って操作してください。
小学校に上がる前の子ども(乳児や幼児)には小児用パッドや小児用モードを使用します。成人用と小児用の2種類の電極パッドが入っている場合があり、イラストをみれば区別できます。小児用パッドが入っていなければ成人用の電極パッドを使用してください。
小児用モードがある機種は、キーを差し込んだり、レバーを操作するなどして小児用に切り替えて使用してください。これらの機能がなければ成人と同じように使用してください。
5)心電図の解析
電極パッドが肌にしっかり貼られると、そのことをAEDが自動的に感知して、「体から離れてください」などの音声メッセージとともに、心電図の解析を始めます。周囲の人にも傷病者から離れるよう伝え、誰も傷病者に触れていないことを確認してください(図24)。傷病者の体に触れていると、心電図の解析がうまく行われない可能性があります。
6)電気ショックと心肺蘇生の再開
(1)電気ショックの指示が出たら
AEDは心電図を自動的に解析し、電気ショックが必要な場合には、「ショックが必要です」などの音声メッセージとともに自動的に充電を開始します。周囲の人に傷病者の体に触れないよう声をかけ、誰も触れていないことをもう一度確認します。
充電が完了すると、連続音やショックボタンの点灯とともに「ショックボタンを押してください」など電気ショックを促がす音声メッセージが流れます。これに従ってショックボタンを押して電気ショックを行います(図25)。このときAED から傷病者に強い電気が流れ、体が一瞬ビクッと突っ張ります。
電気ショックのあとは、ただちに胸骨圧迫から心肺蘇生を再開します。「ただちに胸骨圧迫を開始してください」などの音声メッセージが流れるので、これに従ってください。
(2)ショック不要の指示が出たら
AEDの音声メッセージが「ショックは不要です」の場合は、ただちに胸骨圧迫 から心肺蘇生を再開します。「ショックは不要です」は、心肺蘇生が不要だという意味ではないので、誤解しないでください。
7)心肺蘇生とAEDの手順の繰り返し
AEDは2分おきに自動的に心電図解析を始めます。そのつど、「体から離れてく ださい」などの音声メッセージが流れます。心肺蘇生中はこの音声メッセージを聞きのがさないようにして、メッセージが流れたら傷病者から手を離すとともに、周 囲の人にも離れるよう声をかけ、離れていることを確認してください。
以後も同様に心肺蘇生とAEDの手順を繰り返します。
8)救急隊への引き継ぎ
心肺蘇生AEDの手順は、救急隊員と交代するまであきらめずに繰り返してく ださい。
傷病者に普段どおりの呼吸が戻って呼びかけに反応したり目的のある仕草が認められた場合は、心肺蘇生をいったん中断して様子をみてください。再び心臓が停止してAEDが必要になることもありますので、AEDの電極パッドは傷病者の胸から剝がさず、電源も入れたままにしておいてください。
9)とくに注意をはらうべき状況
電極パッドを肌に貼り付けるときには、とくに注意をはらうべきいくつかの状況 があります。
(1)傷病者の胸が濡れている場合
パッドがしっかりと貼り付かないだけでなく、電気が体表の水を伝わって流れてしまうために、AEDの効果が不十分になります。乾いた布やタオルで胸を拭いてから電極パッドを貼り付けてください(図26)。
(2)貼薬がある場合
ニトログリセリン、ニコチン、鎮痛剤、ホルモン剤、降圧剤などの貼り薬や湿布薬が電極パッドを貼り付ける位置に貼られている場合には、まずこれを剝がします。 さらに肌に残った薬剤を拭き取ってから、電極パッドを貼り付けます。貼り薬の上から電極パッドを貼り付けると電気ショックの効果が弱まったり、貼り付け部位にやけどを起こすことがあります。
(3)医療器具が胸に植え込まれている場合
皮膚の下に心臓ペースメーカや除細動器を植込む手術を受けている傷病者では、胸に硬いこぶのような出っ張ぱりがあります(図27)。貼り付け部位にこの出っ張りがある場合、電極パッドは出っ張りを避けて貼り付けてください。
(4)小児用パッドと成人用パッドがある場合
小学生や中学生以上の傷病者には成人用パッドを使用してください。小児用パッドを用いると電気ショックの効果が不十分になります。
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