【第2章】1 リスクアセスメント⑤
1-3 リスクアセスメントの進め方 実務手順(1)
(1) 危険性又は有害性の特定
指針
8 危険性又は有害性の特定
(1)事業者は、作業標準等に基づき、労働者の就業に係る危険性又は有害性を特定するために必要な単位で作業を洗い出した上で、各事業場における機械設備、作業等に応じてあらかじめ定めた危険性又は有害性の分類に則して、各作業における危険性又は有害性を特定するものとする。
(2)事業者は、(1)の危険性又は有害性の特定に当たり、労働者の疲労等の危険性又は有害性への付加的影響を考慮するものとする。
②の「6対象の選定」に記されている調査の「対象」をそのまま解釈し実施すると膨大な危険性・有害性が想定されますが、ここでは実際的な手法として、作業標準や作業手順書を基にそのステップごとで危険性・有害性を検討することで足りるとしています。(指針 同解説)
なお、「あらかじめ定めた危険性又は有害性の分類」についても標準的な内容が示されています(次ページ)。これについては事業者の基準があればそれでもよいとされています。また、「事故の型」の分類を活用するのも一つのやり方です。
指針
危険性又は有害性の分類例
1 危険性
(1)機械等による危険性
(2)爆発性の物、発火性の物、引火性の物、腐食性の物等による危険性
「引火性の物」には、可燃性のガス、粉じん等が含まれ、「等」には、酸化性の物、硫酸等が含まれること。
(3)電気、熱その他のエネルギーによる危険性
「その他のエネルギー」には、アーク等の光のエネルギー等が含まれること。
(4)作業方法から生ずる危険性
「作業」には、掘削の業務における作業、採石の業務における作業、荷役の業務における作業、伐木の業務における作業、鉄骨の組立ての作業等が含まれること。
(5)作業場所に係る危険性
「場所」には、墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所、足を滑らすおそれのある場所、つまずくおそれのある場所、採光や照明の影響による危険性のある場所、物体の落下するおそれのある場所等が含まれること。
(6)作業行動等から生ずる危険性
(7)その他の危険性
「その他の危険性」には、他人の暴力、もらい事故による交通事故等の労働者以外の者の影響による危険性が含まれること。
2有害性
(1)原材料、ガス、蒸気、粉じん等による有害性
「等」には、酸素欠乏空気、病原体、排気、排液、残さい物が含まれること。
(2)放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による有害性
「等」には、赤外線、紫外線、レーザー光等の有害光線が含まれること。
(3)作業行動等から生ずる有害性
「作業行動等」には、計器監視、精密工作、重量物取扱い等の重筋作業、作業姿勢、作業態様によって発生する腰痛、頸肩腕症候群等が含まれること。
(4)その他の有害性
具体的には、必要な単位で洗い出した作業の手順(ステップ)について、分類表などにあるような危険性又は有害性の有無を確認し、該当するものがあればその具体的内容(どの場面でどういった災害が起こり得るのか)を記録していきます。
・対象作業の取扱いマニュアルや作業手順書を用意しましょう。
(それらがない場合には、作業の概要を書き出します。)
・対象作業をわかりやすい単位で区分しましょう。
・危険性又は有害性の特定は「~なので、~して、~になる」という形で書き出す方法もあります。
・日常の仕事とは違う目、すなわち「隠れた危険がないか」という目で、現場を観察してみましょう。(過去の災害の多くは、「普通にやっていればそんなことは起きないだろう」と思われるような状況で起こっている。)
・「機械や設備は故障する、人はミスを犯す」ということを前提に作業現場をよく観察してみましょう。
流通小売業における商品運搬作業の特定例
作業等 | 危険性または有害性により発生のおそれのある災害の例 |
---|---|
台車による 運搬作業 |
重量物を過積載し、運搬中に操作が出来ず荷崩れや什器に接触し、打撲、骨折、切傷する。 |
運搬物を高く積みすぎて前方視界不良のため、什器や通行中のお客様に接触し打撲、骨折、切傷する。 | |
運搬中に急停止や急旋回を行ったため、什器やお客様に衝突・接触して、打撲、骨折、切傷する。 | |
台車のキャスターが不備でスムーズにまわらず、転倒し打撲、骨折、切傷する。 | |
床面の段差や凸凹のため台車が転倒し打撲する。 |
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前図は厚労省のリーフレットに掲載されている様式例です。特に法的に定められたものはありませんので、こういった例を参考に様式を決めて記録します。
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