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【第3章】3 作業標準の作成と周知①

3-1 作業標準(作業手順書)の意義・目的

労働災害の原因の中で、「作業のやり方・進め方」に関することがかなりの比率を占めています。そのことを知ったうえで事前に対処しよう、というのがこの項の目的です。

ところで、そもそも通常の業務で作業の手順が無いような仕事があるのでしょうか?考えてみると、手順が無いような作業はほぼ無いと言えます。そんな行き当たりばったりのことをしていては、事業として成り立つはずがありません。


しかしながら、労災が発生したケースでよくあるのは、やるべきこととその手段・方法はある程度決まっているが、あとは現場の監督者や作業者個人の裁量に任されているといった例です。当然そういった事業所や業務では、明文化した作業標準や手順書は無いか、あっても守られていません。従って新規採用者へ対する教育や引継ぎなどの時は口頭によらざるをえず、そうなると作業者ごとに内容が違うことにもなりがちです。

いわゆる「ムリ」「ムダ」「ムラ」が生じる原因ともなるわけです。

半面、作業標準や手順書が無くても仕事として成り立っているのは、最低限の「品質」・「効率」・「原価」についてはクリアしなければならない、という意識で作業が行われているからです。しかし「安全」について配慮した手順になっているかというと、心もとないと言わざるをえません。なぜなら人は効率や原価の低減を求めたり、場合によっては品質を確保するため、往々にして「安全」を二の次にしてしまうからです。「安全第一」とはそのことを戒める言葉でもあります。


作業とは事業者の業務命令により、その監督下で作業者が実施するものです。従って作業の手順・方法は「安全」が担保されたものでなければなりません。そのためには以下のことを実施する必要があります。

①作業標準や作業手順書を作成していない事業所は作成する

② 〃 作成している事業所は見直しをする

災害事例

【発生状況】

被災者はパイローラーを使用してパン生地を伸ばす作業を行っていたが、当該作業が終了したためパイローラーの掃除をしようとローラーをタオルで拭いていたところ、回転しているローラーに右手を挟まれ負傷したもの。


【原因】

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。

1 被災者がパイローラーの清掃作業を行う際に安全カバーを取り外し、当該カバーのインターロック機能を無効化した状態でローラーの運転を停止させることなく清掃作業を行ったこと。

2 ローラーの清掃作業を行う際の作業手順について、店長が被災者に対してローラーの運転を停止させた状態で清掃を行うよう口頭では教育をしていたが、作業手順書は作成しておらず、作業手順を順守することが徹底されていなかったこと。

3-1 作業標準(作業手順書)の意義・目的

作業手順書の必要性と効果

作業標準(作業手順書)の意義や目的には次のようなものがあります。

・安全に作業する

・作業者による作業方法のバラツキを無くす

・製品・サービス等の品質を一定に保つ

・現時点で最も良い方法(ノウハウの蓄積)を記録する

・新規採用者等の教育訓練や配置換え等にあたっての引継ぎに使用する


「ムリ」負荷が能力を上回っている(能力を超えた計画)

「ムダ」負荷が能力を下回っている(排除すべき余剰)

「ムラ」「ムリ」と「ムダ」が混在している(適正な方式が標準化されていない)


 

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