【第3章】1 安全教育の実施計画の作成③
1-4 実施計画の作成
安全衛生教育は、それぞれの事業場の実態に即して、どのような教育が、いつ頃の時期に、どのような対象者に必要なのかなどを事前に十分検討したうえで、年単位などで教育・訓練計画を立て、これに基づき実施していきます。
1) 優先順位・計画の手順
教育実施の優先順位は当然法定教育となります。
また、年次計画を立てるとすれば、通常年度当初に入社する労働者に対し「雇い入れ時の教育」が念頭に浮かびます。
このように、「誰に」「何を」教育するかを、法定教育を優先し、実施時期を含め検討し決定します。
2) 教育対象者
要綱では、安全衛生教育を実施すべき対象者を以下のとおり示しています。
(1)作業者
[1]危険有害業務に従事する者
イ 就業制限業務に従事する者
ロ 特別教育を必要とする危険有害業務に従事する者
ハ その他の危険有害業務に従事する者
[2][1]以外の業務に従事する者
(2)安全衛生に係る管理者
[1]安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者及び安全推進者
[2]作業主任者、職長及び作業指揮者
[3]元方安全衛生管理者、店社安全衛生管理者
[4]救護技術管理者
[5]計画参画者
注)安衛法第88条の届け出を要する仕事の計画に参画する者
[6]安全衛生責任者
[7]交通労働災害防止担当管理者
[8]荷役災害防止担当者
[9]危険性又は有害性等の調査等担当者・労働安全衛生マネジメントシステム担当者
[10]「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成27年危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号)」に定める化学物質管理者
[11]「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(昭和63年健康保持増進のための指針公示第1号)」に定める健康保持増進措置を実施するスタッフ
[12]「労働者の心の健康の保持増進のための指針(平成18年健康保持増進のための指針公示第3号)」に定める事業場内産業保健 スタッフ等
(3)経営トップ等
[1]事業者
[2]総括安全衛生管理者
[3]統括安全衛生責任者及び安全衛生責任者
[4]管理職
(4)安全衛生専門家
略
(5)技術者等
[1]特定自主検査に従事する者及び定期自主検査に従事する者等
[2]生産・施工部門の管理者及び技術者
[3]機械設備及び建設物の設計技術者等
以上及び前述の安全教育の種類を参考に「誰に」「何を」実施するか決定します。
特に事業者が自主的に実施する教育については、過去の災害やヒヤリハットの情報を基にしたり、安全(衛生)委員会を活用し現場の要望を取り入れるなど、必要性の高いものを実施するため十分な配慮が必要です。
3) 実施時期・実施場所
計画作成に当たっては、2)に加え実施時期及び実施場所を決定し事業場の安全衛生計画にも反映します。
なお、安全教育を実施場所(主催者)で区分すると、「社内教育」と「社外教育」の二つがあります。社内教育は文字通り事業所内や同一企業内の研修施設などで実施するものであり、社外教育は他法人など(登録教習機関や安全衛生教育諸団体、他社や安全協議会など)へ労働者を派遣し実施を委託するものです。
各種教育機関・団体として以下のものがあります。
・中央労働災害防止協会
・建設業労働災害防止協会をはじめとする業種別(陸上貨物運送事業、林業・木材製造業、港湾貨物運送事業、鉱業)労働災害防止協会
・登録教習機関等都道府県労働局登録機関(技能講習・安全衛生推進者養成講習等)
・労働基準協会(各都道府県・地区単位)他各種民間教育団体
なお、労働安全衛生法で「教育」と表記されているものは原則として当該労働者と労働契約を締結している事業者に実施義務があり、いわゆる社内実施が元々の制度趣旨です。
その場合は適任の講師や教材を準備し、自社の設備環境や作業手順に合わせて実施、内容を記録しておきます。
4) 担当者(指導者・講師)
社内(事業場内)で実施する場合、講習担当者(指導者・講師)を決める必要があります。
その際の講師の資格については一定の基準が定められていませんので、「教習科目について十分な知識、経験を有する者」の中から講師としての適任者を選ぶことになります。
昭和48年3月19日基発第145号通達「労働安全衛生法関係の疑義解釈について」(抜粋)
12 法第59条関係
問 法59条に定める特別の教育は、特定の講師に委託して行ってもさしつえないか。なお、講師の資格如何。
答 さしつかえない。なお、特別の教育の講師についての資格要件は定められていないが、教習科目について十分な知識、経験を有する者でなければならないことは当然である。
なお、社内で特別教育等実施する際の講師を養成するため、中央労働災害防止協会、建設業労働災害防止協会(以上「労働災害防止団体法」に基づき設立された災害防止団体)、また、最近では他の民間教育諸団体でも各種の教育講師養成のための講習を開催しています。
「問」にあるように、外部講師を招いて事業場で実施する方法もあります。
厚労省の安全衛生教育に関する各種通達文書では、教育団体等が実施する際の講師資格について「労働安全コンサルタント」「労働衛生コンサルタント」「職長教育講師養成講座(RST等)修了者」「各種特別教育インストラクター」等を挙げて「望ましい」としているケースが多く、これらを参考に一定の資格要件等社内基準を設けたうえで、「全国労働安全衛生コンサルタント会各都道府県支部」や教育団体、各コンサルタント事務所等に依頼するなどの方法が考えられます。
5) 教材
事業場内で実施する際は教材の準備も必要です。
①市販テキスト
中央労働災害防止協会等災害防止団体や民間の出版社・教育団体等が各種労働安全衛生用テキストを出版しています。
②公的資料(厚労省公表資料等)
インターネット上で各種の公的資料が公表されており、ダウンロード又はタブレット等を使用して活用できます。
例)荷役作業時における墜落・転落災害防止のための安全マニュアル
小売業における労働災害防止のポイント
未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル など
(以上は厚労省「安全衛生関係リーフレット等一覧」に掲載)
③社内資料
教科目によっては作業手順を教える際の手順書など、設備や作業に応じた内部資料が必要な場合もあります。
④使用する機材等
研削といしの取り換え試運転特別教育など、実技科目の場合は設備や機材を必要とする場合があります。特に移動が困難なものや作業に不可欠な物などは、事前に教育に使用するための許可や職場の了承を取っておき、あるいは使用日時を調整しておく必要があります。
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