【第1章】3 総合的な安全衛生管理の進め方②
3-1 総合的な安全衛生管理
「混在作業」とは
元方事業者の労働者及びその請負人の労働者が同一の場所において作業を行うこと
「統括管理」とは
元方事業者の労働者及びその請負人の労働者が同一の場所において作業を行うことによつて生ずる労働災害を防止するための管理
対象は、「元方事業者の労働者及びその請負人の労働者が同一の場所において作業を行う」事業場です。こういった作業を「混在作業」と呼び、それに対する元方事業者の管理を「統括管理」と呼んでいます。
フォークリフト下部に潜って追加点検中、立合者が現場を離れた隙に、別の作業員がフォークリフトを発進させ、轢かれて死亡した。
フォークリフトの修理点検依頼を受け、現地で修理作業を一旦終えたが、立合オペレーターから追加点検を求められ、前面下部に潜り込んで点検していた。立合オペレーターは追加修理依頼をした後に、現場を離れた。その間に点検中と知らされてない関連会社の社員が乗車し、エンジンを起動して発進させたため、点検作業をしていた被災者の上を進行し、左脇腹から右足にかけて轢かれ負傷し、病院へ搬送されたが死亡した。
1)基本原則~事業者ごとの管理
元方事業者といえども、関係請負人の労働者に対する直接の指揮命令権はありませんし、安衛法関連の該当条文が雇用関係にある事業者と労働者について規定したものである限り、原則として関係請負人の労働者の災害について同法上の責任を負うものでもありません。
つまり、元方事業者の事業場内であろうと、安衛法上の措置義務などの履行責任は各々の事業者にあり、その意味では事業場が変わっても事業者ごとに責任を持って法の順守をはじめとする安全管理をしなければなりません。
2)混在作業現場の問題点
一方、元方事業者の労働者及びその請負人の労働者が同一の場所において作業を行う現場(混在作業現場)では、個々の事業者がそれぞれ安全管理に努めても、他の事業者の労働者に影響を与えるような労働災害が発生してしまいがちです。
例えばA社のチームが朝の打ち合わせで当日の業務内容や危険について周知徹底しても、現場が隣接するB社の労働者は内容を知りようがありませんので、業務が溶接作業であったりクレーンやフォークリフトによる運搬であったりすれば、影響を受けないとも限りません。
混在作業現場では、「元方事業者の労働者及びその請負人の労働者が同一の場所において作業を行うことによつて生ずる労働災害」が発生する可能性に対して、各々の事業者の安全管理だけでは不足する部分が出来てしまうことが問題となります。
(当然ながら安衛法では、上記A社の事業者に対しB社の労働者を守るための具体的な措置義務規定は設けられていません。)
3)元方事業者による統括管理
上記2)の問題点をカバーするためには、当事者同士がその都度調整してもよさそうですが、そうすると利害関係も絡んだり情報が行き届かない事業者も出てくるおそれなどもあるので、法や指針などで元方事業者に一定の管理を求めています。
これが元方事業者による「統括管理」と呼ばれるものです。(ちなみに「統括」とは本来バラバラなものをまとめる、という意味があり、安衛法上も「総括」と使い分けています)
なお、あくまで1)の基本原則があり、そのうえで2)の問題点を対象とした管理が「統括管理」ですので、元方事業者が混在作業現場における作業の安全に関して、全ての責任を負うという意味合いのものではありません。
4)総合的な安全衛生管理の具体的な内容
平成18年の法改正により追加された条文を基に、指針により具体的な内容が示されています。
【労働安全衛生法】
第三十条の二 製造業その他政令で定める業種に属する事業(特定事業を除く。)の元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、作業間の連絡及び調整を行うことに関する措置その他必要な措置を講じなければならない。
「製造業(造船業を除く。)における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針」は、以下の三項目で構成されており、それぞれ具体的内容を示しています。
第1 趣旨及び適用範囲
第2 元方事業者が実施すべき事項
第3 関係請負人が実施すべき事項
なお、対象については「本指針は、製造業(造船業を除く。)に属する事業の元方事業者(以下本指針において単に「元方事業者」という。)及び関係請負人を対象とする。」となっています。
また、常時50人以上の混在作業現場では「作業間の連絡調整等を統括管理する者」を選任しなければならないとされています。
「製造業(造船業を除く。)における元方事業者による総合的な安全衛生管理 のための指針」リーフレットより
該当する事業場の安全管理者は法令・指針等の内容を確認したうえで、安全管理者の職務としての「統括管理する者」の監督や、必要な指導、事業場の安全管理項目との調整などを行います。
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