【3】危険防止と安全衛生教育 1
労働安全衛生法では、労働者の危険や健康障害を防止するために、様々な状況に応じて講じるべき措置や禁止事項を定めています。
危険防止に関して全ての事業者が講ずべき措置
事業者は労働者の安全な労働環境を確保し、労働災害の発生を未然に防ぐための措置を講じるよう定められています。(以下例示)
なお、これらは「危険防止措置」「健康障害防止措置」「急迫した危険の防止措置」の三つに大別されます。また、労働者はこれらの事業者が行う措置について、「必要な事項を守らなければならない」とされています。
- 機械設備や爆発物などによる危険への措置
- 掘削や墜落などによる危険への措置
- ガスや蒸気、温度などによる健康障害への措置
- 建築物や作業場などについて必要な措置
- 作業行動から生ずる労働災害の防止についての必要な措置
- 労働災害発生の危険が急迫した際の作業停止、避難などの措置
- 事故が発生した際の救護など安全確保の措置
その他危険防止に関する事業者の義務
その他労働者の身の安全を守るため、建設現場などで一定条件の業務を行う事業者は、以下のような義務があります。
- 保護具の設置、点検
- 安全装置の点検
- 廃棄物の廃棄先の徹底
- 危険行為の禁止
- 無資格者の就労禁止の徹底
元方事業者が講ずべき措置について
◆全ての業種の元方事業者が講じなければならない措置
元方事業者とは、仕事の一部を請負人に請負わせている者(いわゆる元請)のことです。元方事業者又は他の請負人から仕事の一部を請け負った者を関係請負人(いわゆる下請)と呼びます。
全ての元方事業者は以下の指導や指示を行わなければなりません。また、全ての関係請負人及びその労働者は以下の「是正のための指示」に従わなければなりません。
- 請負人とその労働者に労働安全衛生法関連の規定違反がないよう指導すること
- 請負人とその労働者が労働安全衛生法関連の規定違反をしている場合、是正のための指示を行うこと
◆注文者が講ずべき措置
以下に掲げる仕事の注文者は、労働災害を防止するためそれぞれの措置を講じる必要があります。
また、これに関連してこれらの仕事の請負人は注文者の講ずる措置に協力あるいは遵守し、災害の防止に努めなければなりません。
- 特定事業(建設業と造船業)の注文者
➡ 他の請負人に使用させる建設物や設備などについて災害防止の為の措置
(安衛則第644条~第662条) - 化学物質製造などの仕事の注文者
➡ 化学物質などによる災害を防止するための措置(安衛則第662条の4) - 建設業においてパワーショベルなど特定の機械で作業を行う注文者
➡ 特定作業に従事する全ての労働者の労働災害を防止するための措置
(安衛則第662条の5~662条の8) - すべての注文者
➡ 関係法令を遵守できないような指示をしないこと
機械などに関する規制
労働災害の直接原因は「不安全な状態」と「不安全な行動」に大別されますが、このうち「不安全な状態」の発生を防止するための方策の一つとして、機械類やその他の危険有害物などへの規制が設けられています。
- 特定機械(特に危険な作業を必要とする機械=ボイラー、第一種圧力容器、クレーン、移動式クレーン、デリック、エレベーター、建設用リフト、ゴンドラ)の製造は許可を受ける必要があり、検査を受けなければ使用できません。
検査に合格した機械は「検査証」交付され、検査証がない機械の譲渡・貸与は禁止されるなど、厳重な管理が定められています。 - フォークリフトや防じんマスクなど、特定機械以外の機械などで危険又は有害な作業を必要とするもの(安衛法別表第2及び安衛令第13条第3項に規定)については、一定の規格又は安全装置を備えていなければなりません。このうち特に指定されたものについては専門機関による「個別検定」や「型式検定」が義務付けられています。
- クレーンやフォークリフトなどで指定されたもの(安衛令15条)については、各種定期自主検査指針に基づき「定期自主検査」を行わなければなりません。
- 以下のような危険物や有害物に対する規制が定められています。
- 黄りんマッチやベンジジンなど重度の健康障害のおそれがあるもの(安衛令第16条第1項)の製造・輸入・使用等の禁止。
- ジクロルベンジジンなど(安衛令別表第3第1号)の製造許可規制。
- 爆発性の物や発火性の物などの危険有害物質(製造許可物質及び安衛令第18条のもの)に関する内容表示義務。
- 危険有害物質のうち通知対象物(安衛令別表第3第1号及び別表第9)の指定及び、文書の交付等の措置義務。
- 指定化学物質等(安衛令別表第3第1号及び別表第9)を取り扱う事業者は、当該物質に関する危険性又は有害性等の調査を行い、必要な措置を講じなければなりません。
- その他、作業環境を確保するために措置が必要な作業と場所
- 掘削工事
- 足場の組み立て
- 高所作業車の使用
- 高所作業
- 作業構台の作業
- 作業のための通路
- コンクリート工作物の解体作業
- 橋梁・架設の作業
- 型わく支保工の作業
- ずい道(トンネル)の危険防止
ずい道(トンネル)の工事には落盤や爆発、火災などの危険をはらんでいるため、安全確保のための措置が必要です。内容は下記などがあります。- 落盤防止のためのずい道支保工を設けること
- ロックボルトによる落石を防ぐ措置
- 土砂崩れを防ぐための土止め支保工を設けること
- 防護網による落石防止措置
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