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【第4章】第5節 救急処置①

一般に「救急処置」には心肺蘇生を主とした一次救命処置が含まれ、広い意味では骨折や出血、けいれんや熱中症の際の処置などいわゆる「応急手当」を含んで言われる場合もあります。2015年(平27年)の「JRC(日本蘇生協議会)蘇生ガイドライン2015」への改定によりますと、現在は「一次救命措置」と心肺蘇生を除く初期対応を指す「ファーストエイド」に大別されています。

一次救命処置については、何もしないで救急車を待つより、心臓マッサージ(胸骨圧迫)などの処置をした方が救命率が上がることは、統計のうえでも実証されています。

この為、近年各事業所を含め一次救命処置に関する講習等が盛んに実施されていますし、運転免許教習所においても必須科目として取り上げられており、体験された方も多いことと思われます。


さて、実際に同僚が労働災害などにより倒れている状態を想像すると、「何をしたらよいかよく分からない」、「うまく対応できるか自信がない」といった方も多いのではないかと思われますが、特に感電災害による死亡者の多くが「心室細動」状態から心停止に至っているとされていることから、AEDの活用を含む心肺蘇生法を学ぶことは電気取扱業務従事者にとって必須であると言えます。

そこで、この項では応急処置のうち特に感電災害とかかわりの深い一次救命処置について、厚生労働省策定の「救急蘇生法の指針2015」を基本に説明します。


1.救命処置の必要性

突然の事故により手当もせずそのままの状態で時間が経過すれば、それだけ救命率は低くなります。突然の事である為、救急車の要請に時間がかかってしまう事も考えられ、また、通報を受けて救急車が現場に到着するまでの時間も、全国平均として8分~9分掛かるとされています。この間の分単位の時間が、極限状態にある生命の維持には非常に大切で、場合によっては傷病者の生命を大きく左右することもあります。

救命の可能性と時間経過(図3)を見ると、心臓と呼吸が止まってから救急車が来るまでに人が救命処置をした場合と、しなかった場合の救命率の差が歴然としています。応急手当が早ければ救命率は高くなる事は当然ですが、たとえ開始が遅れたとしても救命処置は無駄ではないということです。

また、AEDの使用についてもプロの救急隊員が到着後行った結果より、素人の一般人が早期に行う方がはるかに効果的であることが図4からよくわかります。

このように、こと救命救急に関しては、医療に関しての知識をほとんど持たない人でも、ごく簡単な知識と行動で生命の維持に重要な役割を担うことが出来るということを知り、万一に備えて頂きたいと思います。


図3 救命の可能性と時間経過 図4 電気ショックを救急隊が行った場合と市民が行った場合の1か月後社会復帰率

2.救命の連鎖

傷病者の命を救い社会復帰に導くために必要な一連の行為・行動を「救命の連鎖」といいます。

図4 電気ショックを救急隊が行った場合と市民が行った場合の1か月後社会復帰率

この4つの輪が途切れることなくすばやくつながることで救命効果が高まります。心臓停止の予防から始まり、心臓停止であることの早い認識と通報、早い心肺蘇生と一次救命処置(AED)の使用、救急隊や病院での処置(二次救命処置)の4行動が連続して行われることが重要です。

そのためには、私たち市民一人ひとりが正しい救命処置の知識と技術を学び、実践できるようにしておくことが欠かせません。

 

 

 

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