【第1章】第5節 短絡
1.短絡(たんらく, Short circuit)現象
短絡とは、送電線路の裸電線が風であおられ2線が接触した場合、電動機の絶縁物が劣化して電線と電線が接触した場合、あるいは電源コード゙の上に重量物が置かれ絶縁物が損傷して電線同士が接触した場合などにより、電線に定挌を超える大電流(短絡電流)が流れることをいいます。
短絡電流は、短絡点からみたバックパワーの大きさによって異なりますが、送配電線では数千Aから数万Aに達することもあり、絶縁電線ではジュール熱で溶断したり、絶縁被覆の劣化・燃焼を起こすことになります。
実際の電気設備の短絡は、電気を送る2つの相、又は3つの相の電気配線の被覆(電線を覆い保護するもの)が損傷し、それぞれの充電部分がむき出しになった状態で直接接触することなどによって起こります。
電気は電化製品や工具などといった負荷を接続することにより、そのエネルギーを、光・熱・力と言った別の形のエネルギーに変換して使われますが、負荷を通さずに直接に2相、又は3相間が接続(接触)した状態になると、別の形のエネルギーに変換されない為、非常に大きな電流が流れます。
電力=単位時間に電流がする仕事(量)
P=VI=I²R
(ただし、P : 電力[W]、V : 電圧[V]、I : 電流[A]、R : 抵抗[Ω])
例えば、電圧100Vで使用する手持ち式グラインダーの抵抗値が15Ωの場合、オームの法則により計算上約7A(≒100V÷15Ω)の電流が流れることになります。すると、P=VIですから100(V)×7(A)≒700Wの電力になります。
もし回路上の電線同士の短絡が起こり、そのときの電線の抵抗値を0.015Ωとすると電流は約7000A、電力量は700,000Wという大きさになります。
(※あくまで考え方としての計算上の数値です)
2.短絡による電気災害について
① 人身災害と設備災害
ジュール熱による電線溶断や絶縁電線の絶縁被覆の焼損
アークによる電気火傷
変圧器や発電機の焼損や遮断器の爆発
② 主な短絡の発生原因
電気工事や部品修理などで線間や端子間を短絡させるなどの作業ミス
絶縁電線、ケーブルなどの絶縁被覆の劣化や損傷
③ 短絡事故防止対策
過電流遮断器の設置(回路の短絡電流の遮断能力を有するもの)
電気機器の正常運転の実施
電気配線、スイッチ、接続器具等の絶縁点検の徹底
設備機器等の定期点検の徹底
工事等の際の停電作業の徹底
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