メニューボタン

【第1章】第4節 低圧の電気の危険性について②

2.感電と人体の反応

人間の体に電流が流れることを「感電」(又は「電撃」)と言います。充電部に接触した時、電流を微妙に感知する程度から心室細動による死亡に至る迄、感電災害の度合には軽度な状態から重度な状態があります。


充電

また、充電部に接触した時の人体に流れた電流の大きさ、その日の健康状態なども関係するため、同じ電圧による感電であっても受傷の程度には被災時の状況による個人差も考えられます。


なお、次の様な反応と電流値が一般的な目安とされています。

1.電流を感知する程度(「感知電流」) 1mA
2.苦痛を伴う 5mA
3.けいれんで身体の自由が失われる 10mA
4.呼吸筋のけいれんで呼吸困難になる 20mA
5.意識喪失(一次的失神)、心室細動のおそれ 50mA
6.心室細動により、適切な処置が遅れると死に至る 100mA

心室細動

受傷の程度に影響を与える要因には、以下のものがあります。

・身体に流れた電流の大きさ(通電電流)

・電流が身体に流れた時間(通電時間)

・電流が体内を流れた経路(通電経路~脳、神経、心臓に多くの電流が流れる事により重篤な災害に至る)

・電流の種類(直流・交流や周波数の違い。直流は、交流より感知電流が高く同じ電流・時間等の条件では被害が少ない。交流の周波数の違いによるものは、15ヘルツ~1000ヘルツが最も危険であり、商用周波数の50ヘルツや60ヘルツは危険な周波数帯といわれている)


影響要因

また、感電による生体障害を一般に「電撃傷」と呼び2種類の電気火傷に分類されます。

①皮膚の熱傷 ~ アークやスパークの数千度の高熱により金属が溶融ガス化し皮膚へ付着・浸透による熱傷。熱傷面が青錆色に変化する。

② 皮膚内部組織の破壊 ~ 人体に電流が流れる時のジュール熱による火傷・タンパク質の凝固・内部組織の壊死。

上記の様に感電による傷は、外部皮膚切創・外部の火傷等とは違い、人体内部に影響を及ぼす為、治療に時間がかかります。

また、感電し死に至らなくとも、電流の通り抜けた経路がジュール熱(電気エネルギーにより発生する熱:電熱器の原理)で人体組織の壊死(組織破壊)等により、手や足の切断といった重篤な結果を招く場合もあります。



感電時の電流の大きさと人体の内部抵抗

人体に流れる電流の大きさは、印加電圧と電気抵抗(人体抵抗)で決まりますが、この項では「実際に感電した時には人体にどれくらいの電流が流れるのか」について考えます。(あくまで計算上の数値についてです)


なお、電流についての計算式は中学校で学習する「オームの法則」があります。これに身近な100Vという電圧の器具を使用していて感電した場合を当てはめてみましょう。


オームの法則  電流 = 電圧 ÷ 抵抗 (I=E/R)
記号と名称(英文) 単位と学者
電圧 E(又はV)
electromotive force
V=ボルト
「ボルタの電池」を発明したイタリアの物理学者ボルタ
電流
intensity of electric
current
A=アンペア
電流について研究したフランスの物理学者アンペール
抵抗
Resistance
Ω=オーム
「オームの法則」を発見したドイツの物理学者オーム

電圧を100Vとすると、抵抗がわかれば電流の値が計算できることになりますが、人体表面の抵抗値は状態によって大きく異なるため、感電の危険については最悪の場合を考慮して人体内部抵抗値(手から手、手から足間の内部抵抗値)500Ωが一般的に使用されます。

すると、電流=100(V)÷500(Ω)=0.2となり、電流の値は0.2A(=200mA)となります。上記「2.感電と人体の反応」では100mAで死に至る危険性があるとなっていますので、200mAはさらに危険な値ということになります。


また、500Ωの人体内部の抵抗とは、一般に手と手又は手と足間の抵抗値であり、手と心臓や手と頭など経路によってその値が異なることが知られています。下の図はIEC(国際電気標準会議)60479-1で公表された人体内部の抵抗を図に示したものです。図中の数値は、手から手、手から足の人体内部の抵抗値を100とした時の各経路の人体内部の抵抗の割合を示しています。例えば、手~胸間を45で示していますが、手~手の抵抗が500Ωであれば、手~胸の抵抗は45%の約225Ωであることを示しています。従って、値が小さいほど電気が流れやすい、つまり危険が増すことになります。


図(人体内部の抵抗:手と手を100としたときの割合)

人体内部の抵抗:手と手を100としたときの割合

(出典―電気と工事1998年8月号付録)


以上は最悪の場合の計算ですが、皮膚表面の抵抗は例えば冬季など乾燥時は1万Ω以上と言われ、逆に夏場の作業などで汗や雨でぐっしょり濡れているような場合は極端に低下することもあるとされています。


また、実際には、100V工具の漏電が原因の感電災害で、安全靴を履きコンクリート土間上での作業にもかかわらず死亡している例など、死に至るほどの電流とは思えないようなケースもあります。こういった実例から、熱中症などと同じように健康状態も感電災害の程度に影響することが考えられます。従って電気を扱う作業者に対しては持病など日頃の健康状態の把握や、寝不足や体調不良など作業当日の状態チェック、そしてそれらに応じた対策も必要と考えられます。

 

 

 

このページをシェアする

講習会をお探しですか?

 

▲ページ先頭へ