【第5章】7.防じんマスクの選択、使用等について
7.防じんマスクの選択、使用等について
(平成17年2月7日 基発第0207006号 厚生労働省労働基準局長通達)
防じんマスクは、空気中に浮遊する粒子状物質(以下「粉じん等」という。)の吸入により生じるじん肺等の疾病を予防するために使用されるものであり、その規格については、防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)において定められているが、その適正な使用等を図るため、平成8年8月6日付け基発第505号「防じんマスクの選択、使用等について」により、その適正な選択、使用等について指示してきたところである。
防じんマスクの規格については、その後、平成12年9月11日に公示され、同年11月15日から適用された「防じんマスクの規格及び防毒マスクの規格の一部を改正する告示(平成12年労働省告示第88号)」において一部が改正されたが、改正前の防じんマスクの規格(以下「旧規格」という。)に基づく型式検定に合格した防じんマスクであって、当該型式の型式検定合格証の有効期間(5年)が満了する日までに製造されたものについては、改正後の防じんマスクの規格(以下「新規格」という。)に基づく型式検定に合格したものとみなすこととしていたことから、改正後も引き続き、新規格に基づく防じんマスクと併せて、旧規格に基づく防じんマスクが使用されていたところである。
しかしながら、最近、新規格に基づく防じんマスクが大部分を占めることとなってきた現状にかんがみ、今般、新規格に基づく防じんマスクの選択、使用等の留意事項について下記のとおり定めたので、了知の上、今後の防じんマスクの選択、使用等の適正化を図るための指導等に当たって遺憾なきを期されたい。
なお、平成8年8月6日付け基発第505号「防じんマスクの選択、使用等について」は、本通達をもって廃止する。
おって、日本呼吸用保護具工業会会長あてに別添のとおり通知済であるので申し添える。
記
第1 事業者が留意する事項
1 全体的な留意事項
事業者は、防じんマスクの選択、使用等に当たって、次に掲げる事項について特に留意すること。
(1) 事業者は、衛生管理者、作業主任者等の労働衛生に関する知識及び経験を有する者のうちから、各作業場ごとに防じんマスクを管理する保護具着用管理責任者を指名し、防じんマスクの適正な選択、着用及び取扱方法について必要な指導を行わせるとともに、防じんマスクの適正な保守管理に当たらせること。
(2) 事業者は、作業に適した防じんマスクを選択し、防じんマスクを着用する労働者に対し、当該防じんマスクの取扱説明書、ガイドブック、パンフレット等(以下「取扱説明書等」という。)に基づき、防じんマスクの適正な装着方法、使用方法及び顔面と面体の密着性の確認方法について十分な教育や訓練を行うこと。
2 防じんマスクの選択に当たっての留意事項
防じんマスクの選択に当たっては、次の事項に留意すること。
(1) 防じんマスクは、機械等検定規則(昭和47年労働省令第45号)第14条の規定に基づき面体、ろ過材及び吸気補助具が分離できる吸気補助具付き防じんマスクの吸気補助具ごと(使い捨て式防じんマスクにあっては面体ごと)に付されている型式検定合格標章により型式検定合格品であることを確認すること。なお、吸気補助具付き防じんマスクについては、機械等検定規則(昭和47年労働省令第45号)に定める型式検定合格標章に「補」が記載されていることに留意すること。
また、型式検定合格標章において、型式検定合格番号の同一のものが適切な組合せであり、当該組合せで使用して初めて型式検定に合格した防じんマスクとして有効に機能するものであることに留意すること。
(2) 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第592条の5、鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第37号。以下「鉛則」という。)第58条、特定化学物質等障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)第43条、電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号。以下「電離則」という。)第38条及び粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号。以下「粉じん則」という。)第27条のほか労働安全衛生法令に定める呼吸用保護具のうち防じんマスクについては、粉じん等の種類及び作業内容に応じ、別紙の表に示す防じんマスクの規格第1条第3項に定める性能を有するものであること。
(3) 次の事項について留意の上、防じんマスクの性能が記載されている取扱説明書等を参考に、それぞれの作業に適した防じんマスクを選ぶこと。
ア 粉じん等の種類及び作業内容の区分並びにオイルミスト等の混在の有無の区分のうち、複数の性能の防じんマスクを使用させることが可能な区分であっても、作業環境中の粉じん等の種類、作業内容、粉じん等の発散状況、作業時のばく露の危険性の程度等を考慮した上で、適切な区分の防じんマスクを選ぶこと。高濃度ばく露のおそれがあると認められるときは、できるだけ粉じん捕集効率が高く、かつ、排気弁の動的漏れ率が低いものを選ぶこと。さらに、顔面とマスクの面体の高い密着性が要求される有害性の高い物質を取り扱う作業については、取替え式の防じんマスクを選ぶこと。
イ 粉じん等の種類及び作業内容の区分並びにオイルミスト等の混在の有無の区分のうち、複数の性能の防じんマスクを使用させることが可能な区分については、作業内容、作業強度等を考慮し、防じんマスクの重量、吸気抵抗、排気抵抗等が当該作業に適したものを選ぶこと。具体的には、吸気抵抗及び排気抵抗が低いほど呼吸が楽にできることから、作業強度が強い場合にあっては、吸気抵抗及び排気抵抗ができるだけ低いものを選ぶこと。
ウ ろ過材を有効に使用することのできる時間は、作業環境中の粉じん等の種類、粒径、発散状況及び濃度に影響を受けるため、これらの要因を考慮して選択すること。
吸気抵抗上昇値が高いものほど目詰まりが早く、より短時間で息苦しくなることから、有効に使用することのできる時間は短くなること。
また、防じんマスクは一般に粉じん等を捕集するに従って吸気抵抗が高くなるが、RS1、RS2、RS3、DS1、DS2又はDS3の防じんマスクでは、オイルミスト等が堆積した場合に吸気抵抗が変化せずに急激に粒子捕集効率が低下するもの、また、RL1、RL2、RL3、DL1、DL2又はDL3の防じんマスクでも多量のオイルミスト等の堆積により粒子捕集効率が低下するものがあるので、吸気抵抗の上昇のみを使用限度の判断基準にしないこと。
(4) 防じんマスクの顔面への密着性の確認
粒子捕集効率の高い防じんマスクであっても、着用者の顔面と防じんマスクの面体との密着が十分でなく漏れがあると、粉じんの吸入を防ぐ効果が低下するため、防じんマスクの面体は、着用者の顔面に合った形状及び寸法の接顔部を有するものを選択すること。特に、ろ過材の粒子捕集効率が高くなるほど、粉じんの吸入を防ぐ効果を上げるためには、密着性を確保する必要があること。そのため、以下の方法又はこれと同等以上の方法により、各着用者に顔面への密着性の良否を確認させること。
なお、大気中の粉じん、塩化ナトリウムエアロゾル、サッカリンエアロゾル等を用いて密着性の良否を確認する機器もあるので、これらを可能な限り利用し、良好な密着性を確保すること。
ア 取替え式防じんマスクの場合
作業時に着用する場合と同じように、防じんマスクを着用させる。なお、保護帽、保護眼鏡等の着用が必要な作業にあっては、保護帽、保護眼鏡等も同時に着用させる。その後、いずれかの方法により密着性を確認させること。
(ア) 陰圧法
防じんマスクの面体を顔面に押しつけないように、フィットチェッカー等を用いて吸気口をふさぐ。息を吸って、防じんマスクの面体と顔面との隙間から空気が面体内に漏れ込まず、面体が顔面に吸いつけられるかどうかを確認する。
(イ) 陽圧法防じんマスクの面体を顔面に押しつけないように、フィットチェッカー等を用いて排気口をふさぐ。息を吐いて、空気が面体内から流出せず、面体内に呼気が滞留することによって面体が膨張するかどうかを確認する。
イ 使い捨て式防じんマスクの場合
使い捨て式防じんマスクの取扱説明書等に記載されている漏れ率のデータを参考とし、個々の着用者に合った大きさ、形状のものを選択すること。
3 防じんマスクの使用に当たっての留意事項
防じんマスクの使用に当たっては、次の事項に留意すること。
(1) 防じんマスクは、酸素濃度18%未満の場所では使用してはならないこと。このような場所では給気式呼吸用保護具を使用させること。
また、防じんマスク(防臭の機能を有しているものを含む。)は、有害なガス存在する場所においては使用させてはならないこと。このような場所では防毒マスク又は給気式呼吸用保護具を使用させること。
(2) 防じんマスクを適正に使用するため、防じんマスクを着用する前には、その都度、着用者に次の事項について点検を行わせること。
ア 吸気弁、面体、排気弁、しめひも等に破損、亀裂又は著しい変形がないこと。
イ 吸気弁、排気弁及び弁座に粉じん等が付着していないこと。
なお、排気弁に粉じん等が付着している場合には、相当の漏れ込みが考えられるので、陰圧法により密着性、排気弁の気密性等を十分に確認すること。
ウ 吸気弁及び排気弁が弁座に適切に固定され、排気弁の気密性が保たれていること。
エ ろ過材が適切に取り付けられていること。
オ ろ過材が破損したり、穴が開いていないこと。
カ ろ過材から異臭が出ていないこと。
キ 予備の防じんマスク及びろ過材を用意していること。
(3) 防じんマスクを適正に使用させるため、顔面と面体の接顔部の位置、しめひもの位置及び締め方等を適切にさせること。また、しめひもについては、耳にかけることなく、後頭部において固定させること。
(4) 着用後、防じんマスクの内部への空気の漏れ込みがないことをフィットチェッカー等を用いて確認させること。
なお、取替え式防じんマスクに係る密着性の確認方法は、上記2の(4)のアに記載したいずれかの方法によること。
(5) 次のような防じんマスクの着用は、粉じん等が面体の接顔部から面体内へ漏れ込むおそれがあるため、行わせないこと。
ア タオル等を当てた上から防じんマスクを使用すること。
イ 面体の接顔部に「接顔メリヤス」等を使用すること。ただし、防じんマスクの着用により皮膚に湿しん等を起こすおそれがある場合で、かつ、面体と顔面との密着性が良好であるときは、この限りでないこと。
ウ 着用者のひげ、もみあげ、前髪等が面体の接顔部と顔面の間に入り込んだり、排気弁の作動を妨害するような状態で防じんマスクを使用すること。
(6) 防じんマスクの使用中に息苦しさを感じた場合には、ろ過材を交換すること。
なお、使い捨て式防じんマスクにあっては、当該マスクに表示されている使用限度時間に達した場合又は使用限度時間内であっても、息苦しさを感じたり、著しい型くずれを生じた場合には廃棄すること。
4 防じんマスクの保守管理上の留意事項
防じんマスクの保守管理に当たっては、次の事項に留意すること。
(1) 予備の防じんマスク、ろ過材その他の部品を常時備え付け、適時交換して使用できるようにすること。
(2) 防じんマスクを常に有効かつ清潔に保持するため、使用後は粉じん等及び湿気の少ない場所で、吸気弁、面体、排気弁、しめひも等の破損、亀裂、変形等の状況及びろ過材の固定不良、破損等の状況を点検するとともに、防じんマスクの各部について次の方法により手入れを行うこと。ただし、取扱説明書等に特別な手入れ方法が記載されている場合は、その方法に従うこと。
ア 吸気弁、面体、排気弁、しめひも等については、乾燥した布片又は軽く水で湿らせた布片で、付着した粉じん、汗等を取り除くこと。
また、汚れの著しいときは、ろ過材を取り外した上で面体を中性洗剤等により水洗すること。
イ ろ過材については、よく乾燥させ、ろ過材上に付着した粉じん等が飛散しない程度に軽くたたいて粉じん等を払い落すこと。
ただし、ひ素、クロム等の有害性が高い粉じん等に対して使用したろ過材については、1回使用するごとに廃棄すること。
なお、ろ過材上に付着した粉じん等を圧搾空気等で吹き飛ばしたり、ろ過材を強くたたくなどの方法によるろ過材の手入れは、ろ過材を破損させるほか、粉じん等を再飛散させることとなるので行わないこと。
また、ろ過材には水洗して再使用できるものと、水洗すると性能が低下したり破損したりするものがあるので、取扱説明書等の記載内容を確認し、水洗が可能な旨の記載のあるもの以外は水洗してはならないこと。
ウ 取扱説明書等に記載されている防じんマスクの性能は、ろ過材が新品の場合のものであり、一度使用したろ過材を手入れして再使用(水洗して再使用することを含む。)する場合は、新品時より粒子捕集効率が低下していないこと及び吸気抵抗が上昇していないことを確認して使用すること。
(3) 次のいずれかに該当する場合には、防じんマスクの部品を交換し、又は防じんマスクを廃棄すること。
ア ろ過材について、破損した場合、穴が開いた場合又は著しい変形を生じた場合
イ 吸気弁、面体、排気弁等について、破損、亀裂若しくは著しい変形を生じた場合又は粘着性が認められた場合
ウ しめひもについて、破損した場合又は弾性が失われ、伸縮不良の状態が認められた場合
エ 使い捨て式防じんマスクにあっては、使用限度時間に達した場合又は使用限度時間内であっても、作業に支障をきたすような息苦しさを感じたり著しい型くずれを生じた場合
(4) 点検後、直射日光の当たらない、湿気の少ない清潔な場所に専用の保管場所を設け、管理状況が容易に確認できるように保管すること。なお、保管に当たっては、積み重ね、折り曲げ等により面体、連結管、しめひも等について、亀裂、変形等の異常を生じないようにすること。
(5) 使用済みのろ過材及び使い捨て式防じんマスクは、付着した粉じん等が再飛散しないように容器又は袋に詰めた状態で廃棄すること。
第2 製造者等が留意する事項
防じんマスクの製造者等は、次の事項を実施するよう努めること。
1 防じんマスクの販売に際し、事業者等に対し、防じんマスクの選択、使用等に関する情報の提供及びその具体的な指導をすること。
2 防じんマスクの選択、使用等について、不適切な状態を把握した場合には、これを是正するように、事業者等に対し、指導すること。
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