【第4章】1.呼吸用保護具の種類、性能、使用方法及び管理
1-1 呼吸用保護具の種類、性能
呼吸用保護具は、給気式とろ過式に大別されます。
① 給気式呼吸用保護具
ボンベ、ホース等により新鮮な空気を供給するもので、作業場所の空気を呼吸しない方式です。
従って、酸素欠乏危険場所でも使用できますが、面体以外にボンベやホースとコンプレッサーなどが必要となります。
② ろ過式呼吸用保護具
ろ過材や吸収缶を通して作業場所の空気を呼吸し、空気中の有毒ガス、粉じん等の有害物をろ過します。そのため、酸素欠乏の恐れのある箇所などでは使用できません。
1-1-1 取替え式防じんマスク
取替え式防じんマスクは、ろ過材(フィルタ)で粉じんを除去するタイプのマスクです。使い続けると吸着した粉じんが増え目詰まりを起こし息苦しくなりますので、ろ過材を交換します。
交換時期に関するメーカーの記載例:重松製作所
このろ過材(フィルタ)は、沈降・慣性・さえぎり・拡散効果によって、粒子を捕集する単純な機構ですので、一般的に劣化に強く、粒子の種類によらず、捕集効率は安定しています。
このため、粒子を捕集して、目詰まりによって息苦しくなったら、ろ過材(フィルタ)を交換してください。
吸い込む空気を吸気、吐き出す空気を呼気と呼び、併せて呼吸ですが、吸気の時は肺を膨らませることにより内部の圧力を低くして吸い込み、呼気は逆に肺を縮めることにより内部の圧力を高くして吐き出しています。
下図は、一般の取替え式防じんマスクを使用した場合の、面体内部の圧力の変化を示したものです。外部の圧力(環境圧力)より高ければ「陽圧(又は正圧)」、低ければ「陰圧(負圧)」と呼んでいます。
息を吐いている(排気)時は内圧の方が高い(陽圧)ので外部の空気は入ってきませんが、吸う(吸気)時は低く(陰圧)なるため、もし面体に隙間があったりするとろ過材を通さず有害な空気が入ってくる恐れがあります。(図「リスクあり」)
1-1-2 使い捨て式防じんマスク
使い捨てタイプのマスクも、粒子の補修効率は上記の取替え式防じんマスクと同等の規格になっており、値段も一つが2~300円前後します。
また、市販のサージカルマスクなどとフィット感が全く違い、特に吸気の時の抵抗感が相当ありますので、作業によっては息苦しさを憶えることがあります。
なお、粉じん作業の際の呼吸用保護具は、「防じんマスクの規格」に沿った国家検定品を使用しなければなりません。
防じんマスクの規格
厚労省では防じんマスクの各種規格について定めていますが、ここではそのうち粒子の捕集効率について掲載します。
【等級別記号の説明】
R :取替式防じんマスクであること
D :使い捨て式防じんマスクであること
L :液体粒子による試験に合格していること(フタル酸ジオクチル)
S :固体粒子による試験に合格していること(塩化ナトリウム)
型式検定を受けていない防じんマスクの流通について
(平成21年9月30日厚生労働省労働基準局安全衛生部)
労働安全衛生法令においては、労働者に一定の粉じん作業を行わせる場合には、事業者に対し、労働者に防じんマスクを着用させることを義務付けている。
この防じんマスクについては、所要の規格を具備していることを担保するため、製造者又は輸入者に対し、型式検定を受けることを義務付けている。
今般、この型式検定に合格した旨の表示がない防じんマスクが販売されていることが判明したため、輸入元のプロモート株式会社に事実関係を確認したところ、型式検定を受けていないことが判明したところである。
型式検定に合格した防じんマスクと誤認されて使用される可能性があるため、厚生労働省として、輸入し販売しているプロモート株式会社に対して回収を指示するとともに、この事実を公表することとしたものである。
なお、厚生労働省において、当該防じんマスクの性能を検査したところ、所要の規格を具備していないことが判明している。
1-1-3 電動ファン付き呼吸用保護具
粉じんをフィルタで除去した後の空気を、電動ファンによって着用者に送気します。
電動ファン付き呼吸用保護具は、電動ファンによって強制的に空気を送ることにより常に面体内部の圧力が外部より高くなるため、有害物質の侵入を防ぐメリットがあります。呼吸連動型と一定流量型があります。
呼吸連動型は、吸い込むことで内部の圧力が一定のところまで下がるとファンが回り、フィルターを通して外気を強制的に取り込むため、楽に呼吸が出来るとともに、常に内部を陽圧に保ちます。
一定流量型は、常にファンが回っており、一定の外気を送り続けるタイプですが、鼻や口が渇きやすいというデメリットもあります。
どちらのタイプも常に面体内部は陽圧に保たれているため、少し面体がずれても外気は入ってこないので、安全性は高いといえます。
1-1-4 自給式呼吸器
自給式呼吸器には空気呼吸器と酸素呼吸器があります。
空気呼吸器は、空気が充填されたボンベを携行し、その空気によって呼吸する方式であり、性能はJIST8155で定められています。
酸素呼吸器は各種ありますが、現在は使用者の呼気を再利用する圧縮酸素形循環式呼吸器が一般に使用されています。これは、呼気中の二酸化炭素を清浄剤で吸収・除去し酸素と合わせて循環させる仕組みになっています。
自給式呼吸器は外気を取り込む必要がないため、有害物質に対する安全性は高く、自由に動ける利点もあります。
反面、使用時間が限られていることや、重いこと、使用方法がやや複雑なことなどがデメリットとされています。
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