【第2章】1.粉じんの発散防止対策の種類及び概要②
1-2 粉じんの発散を防止する方法
1-2-1 密閉
粉じんそのものが空気中に飛散することを防ぐためには、発生源を密閉した中で作業を進める方法が考えられ、製造業などで採用されています。
原料を粉砕したり,ふるい分けしたり,混ぜたりすると多くの粉じんが発生しますが、機械・設備の発生源を密閉することにより粉じんの発散をおさえることができます。
また、原料や材料を投入したり製品を取り出したりする作業についても作業者が行うのではなく、作業を自動化することにより粉じんの発生をおさえることができます。
ただし、鉱業や建設業といった発生源そのものが移動し変化するような作業現場では、密閉により発散を防止することは困難です。
1-2-2 湿潤化
かつては夏場に道路や庭に水を撒く(「打ち水」)風景があちこちに見られましたが、これには気化熱によって地表の温度を下げる目的と、もう一つはホコリが舞うことを防ぐという意味がありました。
同じように、粉じんの発散を防ぐ目的として、湿潤化による方法が多く用いられています。この方法なら屋外の現場などにも可能ですし、製造工程での一部でも採用可能です。(セメントの製造工程で水を加えてしまうと製品化できなくなるなど、すべての場合に対応できるわけではありません。)
散水によく用いられる設備としては,シャワー,スプレー,スプリンクラー,散水車などがあり、粉じんの発生の原因となる原料や材料にあらかじめ散水して湿らせておく方法もあります(「与湿」)。
また、歯を研磨する際と同じように、グラインダーによる研磨など水や油を注ぎながら作業する方法もあります。
1-3 粉じんの除去(排気装置など)
粉じんを吸入しないための方法のうち、発生した粉じんを漏れなく捕捉したり、作業場以外に排出する方法として、除じん装置や排気装置・換気装置などがあります。
このうち代表的なものとして「局所排気装置」と「プッシュプル型換気装置」があります。
局所排気装置とは,粉じんの発生源に厨房などにあるのと同じようにフードを取り付け,このフードにより粉じんを発生源において漏れなく捕捉し,フアンで吸引してダクトを経て排気口から外に出す装置をいいます。
なお、自分さえよければよいというわけにはいきませんので、除じん装置を備えており,きれいな空気を屋外に排出します
使用の際には,次のような留意点があります。
①フードは,発生源を囲むようにするか,できるだけ作業位置に近づけた位置に設けること。
②フードの大きさと型は,発生源の状態に適したものを設けること。
③作業者は,フードに吸引される汚れた空気の中に立ち入ったり,粉じんにさらされたりしないような位置で作業すること。
④窓や出入口を開けることによりフードに吸引される空気が乱れる場合は,窓などを開けないこと。
⑤冷房装置や扇風機の風で,フードに吸引される気流が乱されないようにすること。
⑥冬季などで,外気が入り寒さを感じても局所排気装置は止めないこと。
一方,プッシュプル型換気装置とは,粉じん発生源の一方から送気(プッシュ)で粉じんを搬送し,反対側から吸気(プル)することによりー定の気流をつくり,搬送されてきた粉じんを捕捉,排出するものをいいます。この装置は,フード,ダクト,除じん装置,送風機,排風機,排出口などから構成されています。
また,この装置には,天井,壁および床が密閉されているブースを有する密閉式プッシュプル型換気装置と,それ以外の開放式プッシュプル型換気装置があります。
1-4 作業別の対策の例
1-4-1 グラインダなどによる研削・研磨・切断等の作業
グラインダとは、研削砥石(切断砥石を含む。)を使用して回転させることにより、加工材の研削、切断を行うか又は機械を保持し加工物を押し当てて加工する機械をいいます。
グラインダには、ディスクグラインダ、切断機、卓上グラインダなどの種類があります。グラインダ作業では、金属を研磨し若しくは「ばり取り」、又は金属を裁断するときに発生する粉じんや、研削といしの微粉は、長時間にわたって吸引すると健康障害を起こすおそれがあり、次の粉じん防止対策が必要となります。
①局所排気装置による換気を行う。
②集塵機付きの設備・工具を使用する
③防じんマスクを必ず使用する。
1-4-2 アーク溶接・溶断作業
溶接ヒユームは、アーク熱によって溶かされた金属が蒸気となり、その蒸気が空気中で冷やされ、個体状(金属酸化物)の細かい粒子となったもので、肉眼では煙のように見えます。
この粒子の大きさは1マイクロメートル以下で、鎖状につながっています(1マイクロメートル(?)=0.001ミリメートル(mm))。
溶接ヒユームはアーク熱による上昇気流に乗ってかなりのスピードで拡散し、作業環境の気中濃度は、煙のように立ち込めているところは、数10mg/mから100mg/m3超えの非常に高い濃度に達しています。
溶接ヒュームが特化物に(令和3年4月1日より)
溶接ヒュームのばく露による有害性は、マンガンによる神経機能障害等の健康障害を及ぽすおそれがあることが明らかになったことから、労働安全衛生法施行令、特定化学物質障害予防規則(令和3年4月1日施行)等が改正され、以下の措置等が必要となりました。
(ア)作業主任者の選任
「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」を修了した者のうちから、特定化学物質作業主任者を選任しなければなりません。
(イ)特殊健康診断の実施
屋内、屋外作業場を問わず、雇入れ又は配置換えの際及び6月以内ごとに1回、定期に、医師による特殊健康診断を実施することが必要になります。(※じん肺法に基づくじん肺健康診断は、従来どおり実施)
(ウ)その他必要な措置
a.作業場内の溶接ヒューム濃度に応じた換気
b,屋内作業における個人サンプラーによる測定及びその結果に応じた措置(令和4年3月31日までに実施)
c,有効な呼吸用保護具の使用(屋内・屋外作業を問わず)
経過措置:(ア)・(ウ)のa・(ウ)のcについては、令和4年4月1日より正式に適用(令和4年3月31日までは猶予期間)
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