【第1章】1.粉じんの有害性③
1-3 呼吸とじん肺
じん肺は有害な粉じんを長年吸い続けることによっておこる肺の病気ですので、呼吸の仕組みと大きくかかわっています。
人間の体は、正常な状態を維持するため悪い影響を排除する様々な仕組みがあることが知られていますが、呼吸の場合も多くのごく小さな器官が絶えずその働きをしています。
例えば、煤煙など大きな粒子が呼吸により取り込まれたときは、鼻毛が体内に取り込まれることを防いだり、ある種の神経細胞に触れて咳を誘発することにより体外へ排出するといったことから、深部の気管支の働きなど、私たち本人が意識しないところで正常な呼吸を維持するための働きがなされています。
呼吸の最初は太い気管です。
気管から順番に細かく分かれて気管支になり更に細かく分かれて肺胞嚢になります。
吸込んだ空気は気管から23段階で肺胞に到達します。
実際には16段階目からガス交換機能(酸素と二酸化炭素交換)はあるようです。
肺が異物を排除する仕組みはとても優れています。
この仕組みが次の図です。
図の左から空気の流れとなっていますが、細菌、ウイルス、異物などが呼吸と共に侵入します。
それをベタベタの粘液が絡め取って口のほうに排除する仕組みです。
粘液板と書いてありますが粘液の層です。
粘液の層の下に繊毛(せんもう)があります。
繊毛は下の繊毛上皮細胞から生えていて(1個当たり200~250本)1秒間に13回、口の方に向かって振動しています。
その振動で粘液を口に出しているのです。
これが痰です。
つまり気管支粘膜が分泌する痰と異物です。
私たちはあまり意識していませんが通常1日に100ミリリットル前後出ています。
しかも24時間稼動の休みなしです。
粘液はどこから出るのかと言うと所々にある杯細胞で絶えず作っています。
そして通常と異なる異物が入ってきたとき、大きい物を飲み込んだり、食道に入る物を誤飲したり、PM2.5のような微粒子・・・・等はせきとして排除しなければ間に合いません。
そこで迷走神経の先端の咳嗽(がいそう)受容体(咳をする神経)にこれらの異物が触れたときに咳をして排除します。
加齢や喘息で呼吸系にトラブルがあると繊毛の数が少なくなったり、動きが弱くなって、重力に逆らって異物を排除する事が難しくなります。
この粘液板の仕組みは気管支の3段階目まで沢山あり、4段階目以降は少なくなりますので、小さくて異物と判断されにくい物は通過する可能性もあります。
そして心配なのは肺胞まで侵入した場合です。
小さい物は(pm1.0)は肺胞まで到達するとされ、多くはそのまま呼吸で排出されますが、排出できなかったものが徐々に増えて呼吸機能の低下に至り、じん肺の原因とされています。
なお、呼吸は口でもできますが、上記のような異物に対する防御機能は鼻呼吸の方が格段に優れています。
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