【第3章】1 安全教育の実施計画の作成①
1-1 安全教育の必要性
教育の目的は、「社会が直面する最重要課題の解決」に力を尽くすために、自ら考え行動できる人間を育てることでなければならない。
ほとんどの教師が、生徒に知らないことを発見させようと質問ばかりして、時間を無駄にしている。
知っていることに気づかせること、知るための方法に気づかせることを目的とするのが、意味のある質問であり、本当の教育だ。
アルベルト・アインシュタイン
労働安全衛生法においては、一定の危険有害業務に労働者を就かせる場合には、資格取得や特別教育を実施するよう義務付けています。これは、過去の労働災害を分析した結果、危険有害性に関する知識や対応する技能があれば防止できたケースが多数認められたからです。
労働災害や職業性疾病を防止するためには、機械や設備を安全な状態で使用するだけでなく、これを使用する労働者に対して適切な教育を実施する必要があります。(東京労働局HPより)
機械設備の「本質安全化」が進み、自動車の自動運転も現実のものとなってきましたが、労働現場ではまだまだ人の判断一つで事故・災害が発生する場面が数多くあります。
また、残念ながら災害発生後の原因を見てみると、「どうしてこんなやり方をしたのだろう」とか、「決められた通りやっていたらこんなことにならなかった」という事例が大半です。労働災害のほとんどは後になってみると「防ぎようがあった」と言ってもよいかもしれません。
その原因の一つである「不安全行動」の防止策の一つとして、安全教育は不可欠です。
事例
頭部を挟まれ死亡
【発生状況】
被災者は、年始挨拶のため得意先事業場に到着し、車両を県道路肩に駐車した。被災者が運転席から降りた際に、車両が後方に逸走したため、被災者が車両を止めようとして自車と後方に駐車してあった車両との間に入り、頭部を挟まれて死亡した。被災者が駐車した場所は後方へ下り勾配となっており、エンジンは切っていたが、シフトレバーはニュートラルでサイドブレーキはかけていなかった。
【原因】
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
この被災者は、8か月前にも逸走事故を起こしているが、店長から厳重注意を受けたものの、被災者への特別な安全教育は行われなかった。
車両管理者による事故後の各店舗への再発防止対策指示等もなされておらず、そのため、車両の逸走防止措置の実施について、十分に徹底されることがなかった。車両停止時の基本的動作が身についていなかったことが主な原因である。
第Ⅰ章の災害分析で労働災害の直接原因は「不安全状態」と「不安全行動」ということでしたが、このうち「不安全行動」の理由を「なぜこんな行動をしたのか」と分析したところ、以下の3つに大別されました。
①(正しいやり方を)知らなかった
②(正しいやり方を知ってはいるが)できなかった
③(正しいやり方を知ってはいるが)やらなかった
そこで安全教育には「知識教育」「技能教育」「態度教育」が必要とされています。
1-2 「安全衛生教育等推進要綱」
安全衛生教育は安全衛生管理体制の確立、法令遵守の徹底、リスクアセスメント、自主的な安全衛生活動、快適職場形成などとともに国の労働安全衛生行政における重点的な施策であり、平成3(1991)年1月に「安全衛生教育等推進要綱(以下この章では「要綱」)」(平成31年3月最終改正)が示されています。
要綱では、対象となる教育の種類や対象者、実施時期や実施方法などが示されており、各事業場での安全衛生計画の作成等の際重要な指標となるものです。
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