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【第4章】参考:空気呼吸器と酸素呼吸器 Ⅰ 空気呼吸器

1 構造

空気呼吸器は、空気が充填されたボンベを携行し、その空気によって呼吸する方式であり、性能はJIST8155で定められており、デマンド形とブレッシャデマンド形の2種類があります。両者の面体内圧力変化と環境圧力の関係は下図に示す通りです。
また、空気呼吸器は通話装置付きマスク、拡声装置や被災者救助用の補助マスクを備えたものがあります。

① デマンド形空気呼吸器
デマンド形空気呼吸器は、着用者の吸気に合わせて空気が供給され、吸気を停止した時及び呼気の時(面体内が外気と同圧又は陽圧のとき)には供給を停止する機能を備えています。

② プレッシャデマンド形空気呼吸器
プレッシャデマンド形はデマンド形に加えて、面体内の圧力を常に外気より陽圧にする機能を備えており、面体と顔の間に多少のすき間ができた場合にも、有害な外気の浸入を防ぐことができます。現在は、安全性の高いプレッシャデマンド形が多く使用されています。
プレッシャデマンド形呼吸器の構造は、ボンベからの高圧空気を減圧弁で中圧(4.5~0.7Mpa)に減圧し、さらにプレッシャデマンド形弁で呼吸できる圧力に減圧します。ボンベの最高充てん圧力は29.4MPaと14.7MPaの2種類があります。

面体内圧力変化と環境圧力の関係

2 使用時間

空気呼吸器の使用時間は、使用者の労働強度によって異なります。そのため有効使用時間の配分に十分な注意が必要です。
なお、有効使用時間は次式により計算します。

各種労作時の酸素消費量

3 装着前の点検

(1)外観
変形、きず、ひび割れ及びボンベの接続部等を点検します。

(2)ボンベ圧力
ボンベ内圧力は、そくし弁の圧力指示計で点検します。そくし弁に圧力指示計がない場合は、呼吸器の圧力指示計で点検します。
なお、圧力の値は最高充てん圧力の80%以上とします。

(3)高圧・中圧部
ボンベのそくし弁を開き、高圧・中圧部に空気を供給し、ボンベのそく止弁を閉じます。その後、約1分問圧力指示計の指針の変化を観察し、指度が低下しないことを確認します。
1MPa以上低下する場合には接続部のOリングの損傷、異物の噛み込み等のおそれがあり、各接続部を再点検します。点検後も圧力低下が改善されない場合は、使用せずに専門のメーカーに点検修理を依頼します。

(4)警報機
バイパス弁を少し開き、徐々に圧力を下げ、設定された圧力(約3~6MPa)で警報が作動することを確認します。作動停止後、さらにバイパス弁を開き、残圧を抜いた後、バイパス弁を閉じます。点検終了後は、ボンベのそく止弁が閉じていることを確認します。

(5)プレッシャデマンド形(面体)
そく止弁を開いた後、面体を顔に密着させ吸気します。このとき、自動的にプレッシャデマンド弁が作動し空気が供給されます。面体の頬の部分に指を入れ、空気が面体の外に向かって漏れることを確認します。面体の取外しは、陽圧ロックボタンを押し顔から放します。

4 装着の手順

①空気呼吸器を左手から(圧力指示計、警報器のついている方から)背負います。

②脇バンドを下へ引き、上下位置を調整します。

③胸バンド、腰バンドを接続し、長さを調整します。

④プレッシャデマンド弁のインジケータが赤色になっていることを確認します。

⑤そく止弁のハンドルをゆっくり開き、全開にします。ハンドルが止まったら半回転戻します。

⑥面体のしめひもをすべてゆるめ、つりひもを首にかけます。

⑦面体のしめひもを左右に広げ、あごの方からかぶります。

⑧左右のしめひもを下から順番に左右同時に後ろへ引いて締めます。

⑨深く呼吸をすると「パチッ」と音がして空気が供給され、面体内が自動的に陽圧になります。面体の頬の部分に指を入れ、空気が漏れることで陽圧なっていることを確認します。

5 使用方法

(1)圧力指示計
使用中は時々圧力指示計を見て、空気の残量を確認しながら作業をします。

(2)警報
圧力指示計が警報設定圧力(約3~6MPa)まで下がったとき、または警報が鳴ったら直ちに作業を中止して安全な場所に戻ります。安全な場所が遠い場合には、途中の空気消費量を考慮してあらかじめ作業中止の圧力を決めておきます。

(3)故障
プレッシャデマンド弁の故障等で吸気ができなくなったときは、慌てて面体を外してはいけません。バイパス弁を開くと面体内に空気が一定流量で供給されるので、面体を装着したまま安全な場所へ退避します。
なお、バイパス弁は、次の目的にも使用できます。

① 点検時における残圧の開放

② 面体内に有害空気が侵入した場合の排気(ブロー)

③ アイピースの曇りの除去(ブロー)
※ ブローは、ボンベの空気を使用し、使用時間が減少するので注意が必要です。

6 脱装方法

(1)脱装場所
必ず、安全な場所に移動し、陽圧ロックボタンを押して陽圧を解除します。

(2)面体
呼吸を止めて面体のバックルを起こし、しめひもをゆるめ、面体を外します。その後、そく止弁を閉じます。

(3)バンド
腰バンドのバックルを起こし、ゆるめて外します。同様に、装着と逆の手順で胸バンドを外し、脇バンドをゆるめ空気呼吸器を下します。

(4)バイパス弁
バイパス弁をゆっくり開き、器械内部の残圧を開放します。圧力指示計がゼロを示したら、バイパス弁を止まるまで軽く閉めます。

7 使用後の管理

(1)呼吸器
使用した後は乾いた布で拭き取ります。これができない場合は、水で洗ってから陰干しします。

(2)面体
顔の汗や脂で汚れるので中性洗剤等を用いてよく水洗いし、消毒用アルコール等で拭いて消毒します。
ゴムの部分は特に油や有機溶剤に弱いので注意(シンナー等を使用しない)が必要です。油汚れは中性洗剤を加えたぬるま湯で拭き取った後、十分水洗いして陰干しします。また、ゴムは紫外線などにより劣化するので、直射日光に当てて乾燥しないようにします。

(3)ボンベ
使用済みのものは、器械から外し、そく止弁接続口にねじ山保護及び異物混入防止のためキャップを取り付けます。
次の使用に備えて、空気充てん済のボンベを器械に取付け、組み立てておきます。その際、そく止弁を少し開き、ねじ部のごみを吹き飛ばします。また、交換するボンベは、必ず空気ボンベであることを確認します。
組立て後は、そく止弁を開いて内部の圧力を確認し、そく止弁を閉じます。
使用済のボンベは次の使用に備えて、空気を再充てんしておきます。ボンベの充てんは必ず高圧ガス保安法による許可を受けたガス充てん所に依頼して行います。
なお、高圧空気は,油に触れると爆発する危険性があるため、ボンべ・調整器・圧力指示計等の高圧空気に接する部分には油をつけないことを徹底します。

8 保管と点検

(1)保管場所
保管は直射日光の当たらない乾燥した場所で、夏季でも気温が40℃以下の場所とします。
なお、避難時および救出時に使用する空気呼吸器は緊急時に素早く取り出せる場所に保管します。

(2)空気呼吸器
空気呼吸器は、日常の始業点検のほか、作業主任者が3カ月ごとに1回定期の点検を行い、その結果を記録しておきます。空気呼吸器は、金属・プラスチック・ゴム・布等でできているので、それぞれの特性に応じた点検整備を取扱説明書に従って行います(定期点検項目は下表参照)。

(3)ボンベ
ボンベは、高圧ガス保安法により、耐圧検査を受けることが義務付けられているので、耐圧検査有効期間内であることを確認のうえ使用します。

(4)面体,吸気管,呼気弁
これらの部品はゴムでできており、時間の経過とともに自然に劣化するので、取扱説明書に従って点検整備を行い、必要に応じて交換する必要があります。

空気呼吸器の定期点検項目 空気呼吸器の定期点検項目

9 ボンベの取扱い

(1)保安規則
空気呼吸器に使用されているボンベは高圧ガス保安法、一般高圧ガス保安規則及び容器保安規則により規制されています。

図 3-3 ボンベ容器の刻印

図 3-3 ボンベ容器の刻印

(2)定期検査
ボンベの容器(シリンダー)及び付属のそく止弁(バルブ)は高圧ガス保安法により、FRP複合容器は製造後3年ごと、鋼製容器は5年ごとに定期に検査を受けなければならない規則があります。

(3)ボンベ容器の刻印(図3-3)
ボンベ容器には、容器検査合格表示・充てんすべき高圧ガスの種類・容器番号・容器の質量および内容積・容器検査合格年月等が刻印又は表示されています。

(4)ガスの種類別表示
充てんされているガスの種類を示すために、空気用はねずみ色、酸素用は黒に塗装されています。この着色は、表面積の2分の1以上とされ、ガス名は白色文字で表示されています。

(5)保管
直射日光の当たらない、乾燥した場所で、温度が40℃以下の場所に保管することが定められています。

 

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